2014-07-24

フクシマ慰謝料訴訟

東電の言っている『財物損害の中に慰謝料的要素を含めるのは、損害を二重に評価することになる』などというのは、どう考えてもオカシイですよね。物だけ賠償すればそれでお終いという厚顔無恥なブラック企業は、やはり破綻処理して、まだまし(?)な国が賠償すべきだったのでしょうね。『原発事故で傷つけられた人々の代表的な戦い』であるだけに、目が離せません。
『「古里喪失」責任問えるか 原発事故慰謝料訴訟』 【7/22 河北新報】

福島第1原発事故で避難を強いられた福島県民ら354人が、古里を失った精神的苦痛に対する慰謝料などを東京電力に求めた訴訟の審理が福島地裁いわき支部で行われている。古里喪失の慰謝料を全国に先駆けて求めた訴訟だ。原発事故は固有の文化や伝統など地域の財産を破壊し、コミュニティーを分断した。焦点は原発事故特有の被害について法的責任を問えるかどうか。同種の訴訟は各地で提起されており、審理の行方は影響を与えそうだ。(福島総局・横山浩之)

◎原告、人格発達権と平穏生活権の「侵害」と主張 東電反論「損害二重に評価」

原告側は一律1人2000万円の古里喪失慰謝料を求め、2012年12月に提訴した。併せて月50万円の慰謝料や避難先での住居の再取得費用なども賠償対象とした。

原告側弁護団が、古里喪失慰謝料の法的根拠に据えるのが「人格発達権」と「平穏生活権」だ。

長い歴史を経て形成された地域社会は、個別の土地建物などの賠償に還元できない固有の価値を持つ。原発事故により、そこで過ごすはずだった人生の発達可能性が奪われ、「人格発達権が侵害された」と弁護団は主張する。被ばくの不安や先行きが見えない焦燥感により「平穏な生活も失われた」と訴えている。

原告の年齢は幅広く、避難前の住所も広範囲に及ぶが、喪失感は共通する。金額を均一にするため、交通事故の後遺症の慰謝料は年齢より障がいの等級が基準になることを参考にした。

6月18日の口頭弁論で、杉浦正樹裁判長は「避難に伴う慰謝料などと別に請求する基準は何か」「共通する損害はどの事実で認定できるのか」と原告側に問い掛け、原告側の認識との隔たりが浮き彫りになった。

原告側弁護団の笹山尚人事務局長(第二東京弁護士会)は「一人一人の事実を意見陳述や意見書で分かりやすく伝えていく。どう受け止めるかは裁判所の判断だ」と話す。現場検証を求めているが、提訴から2年半以上過ぎても裁判所は判断を留保している。

東電は準備書面で「財物損害の中に慰謝料的要素を含めるのは、損害を二重に評価することになる」と反論している。

同種訴訟は各地の裁判所に提起されている。3月3日には南相馬、双葉、富岡、浪江の4市町から宮城県に避難した58人が、東電と国に古里喪失慰謝料として1人4220万円の支払いを求め、仙台地裁に提訴した。

避難している福島県民は13万6000人(2月時点)に上り、同種訴訟は拡大する可能性がある。笹山事務局長は「原発事故で傷つけられた人々の代表的な戦いだ」と意義を強調する。

◎金ではなく怒りと意地 一方的賠償納得できぬ 原告団

原告団事務局長を務める主婦金井直子さん(48)が埼玉県所沢市から福島県楢葉町に引っ越してきたのは1996年3月。小さな町だったが、豊かな自然に魅せられた。

町には小学校が二つ、中学校が一つしかなく、2人の息子は町の子どもたち全員と同級生か幼なじみ。PTA活動などに参加し、友人が増えた。家族ぐるみの付き合いでバンドも結成した。06年に自宅を新築し、充実した生活を送るはずだった。東京電力の関連企業で働いていた知人もいたが、原発には特に興味も関心もなかった。

福島第1原発事故でいわき市に避難し、同市内の借り上げ住宅で家族と暮らしている。訴訟では慰謝料を請求しているが、金が欲しいのではない。東電に対する怒りや避難者の意地が2000万円という金額になった。

自宅に向かう途中、道路脇に見渡す限り除染廃棄物の収納袋が積み上がっている。「もう戻れない」と思うと、自然に自宅から足が遠のく。台所の冷蔵庫に張ってあるのは2011年3月のカレンダー。時が止まったままだと感じる。

福島県川俣町議の菅野清一さん(63)は原発事故前、川俣町山木屋地区に住んでいた。同地区は町内一の農業地帯で、農繁期は近所同士助け合って農作業をした。訴訟では山木屋地区住民らを束ねる原告団長を担う。

避難指示が解除されても、元の暮らしは戻らない。歴史が形作った地域が解体され、金に換算できないものを失った。加害者が一方的につくった制度で賠償が決まることに納得できず、訴訟に参加した。

経営する映像制作会社で、原発事故前の地区の営みと荒廃した現状を撮った写真を集めた。口頭弁論で紹介しようとしたが、裁判所は許可しなかった。将来のために、除染作業などを記録する活動を続けている。

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