2012-09-01

産業や経済を人命より優先する新聞 (4) 日本経済新聞

昨日書いた読売に続き、さすが「経済」という言葉を名前に使うだけはあります。さしづめ、「国民の(健康より)経済が第1」と言ったところでしょう。原発無しで夏を乗り切ったところなのに、とにかく原発を続けたいという論調です。滝順一君もこの原稿をチェックしたんでしょうか?

いろいろ理由を付けてはいますが、デマっぽいのが「自称」クオリティペーパーらしくないですね。

  1. 自給率と言っても、ウランは自給できるんでしたっけ?
     
  2. 安全保障とか、ひょっとして原発を作るってこと?
     
  3. 経常収支が赤字になろうが良いではないですか
     
  4. 温暖化なんかそもそもしていないでしょ

『原発ゼロを性急に選んでいいのか』 【8/31 日経社説】

政府は2030年に向けたエネルギー・環境戦略を決めるにあたり、原子力発電の全廃を選択すべきではない。

私たちは福島第1原発事故を契機にエネルギー・環境政策を大きく変える必要があると主張してきた。原発の新設は難しくなり、原子力への依存は下がる。

エネルギー自給率4%
その代わり自然エネルギーを可能な限り増やし、環境影響に配慮しつつ化石燃料を賢く利用する必要がある。エネルギーの利用効率を高め、ムダをなくすことで総使用量を減らす努力も重要だ。

しかし原子力を選択肢からはずすのは賢明ではない。日本のエネルギー自給率は約4%(原子力除く)。国産は自然エネ以外にわずかな石油と天然ガスだけだ。

1970年代の2度の石油危機を通じ、ひとつのエネルギー源に依存しすぎる危うさを学んだ。政府が原発ゼロを選べば資源国が日本の足元をみるのは避けがたい。多様なエネルギーの選択肢を手中にとどめおくことこそ、広い意味で国の安全保障にほかならない。

地球温暖化への対処もある。原子力は温暖化ガスの排出削減に有効だ。世界第3の経済国である日本が世界共通の課題解決に背を向けることはできない。

自然エネルギーの実力は未知数だ。発電コストは下がるのか。電力の安定供給に支障はないか。当面は自然エネ拡大に全力を投じるにしても、普及に伴う利害得失を常に点検し、もし限界が見えたら戦略を見直す柔軟さが要る。そのためにも選択肢は多い方がいい。

石炭資源を有しエネルギーのおよそ3割を自給するドイツも昨年に脱原発を決めるまで長く曲折した議論を経た。スウェーデンは逆に80年代に決めた原発全廃の方針を今は凍結している。様々な試行錯誤がある。

原発をすべて止め火力発電で代替したと仮定すると、石油や天然ガスの輸入額が年間約3兆円余分にかかる。これは東日本大震災前の10年度に国内の全製造業が稼ぎ出した経常利益(約16兆円)のおよそ5分の1に相当する。

化石燃料の輸入が増え続ければ、19年度にも日本の経常収支が赤字に転じる可能性があると、日本経済研究センターは試算する。

燃料調達費の増大と電力不足は日本経済に多くの面でマイナスの影響を与える。企業の生産能力の低下やコスト上昇につながり工場の海外移転を加速する恐れが大きい。雇用や所得の減少をもたらし国民生活を圧迫するのが心配だ。

家計は電気料金があがっても節約で支払いを減らし、賄えるかもしれない。しかし製造業、とりわけ円高などでぎりぎりの経営を強いられてきた中小・零細の工場にとりエネルギーコストの上昇は死活問題だ。

電力は暮らしや産業の基盤であり電気は現代社会の「血液」といえる。万が一にも途絶すれば、経済や社会がまわらなくなる。

原子力利用は安全確保が大前提だ。従来の安全規制に問題があったのは間違いなく、国民の多くが憤りを感じている。原子力規制委員会の発足を制度刷新の機会とし信頼回復を急がねばならない。

廃棄物問題に道筋を

政府や国会の福島事故調査委員会は、安全神話と決別し「事故は起きうる」との認識にたち規制を厳正にするよう求めた。政府や電力会社は原発に多重の安全対策を施したうえ、「事故」を「災害」に拡大させない防災面での対策を充実させる重い責任を負う。

使用済み核燃料や廃棄物の処分について政府は早期に道筋を示さねばならない。明確な方策がないまま、長く原子力を使い続けることに抵抗感を抱く人は多い。

世界では427基の原発が稼働し75基が建設中だ。多くは電力需要が増える新興国などに建つ。世界は原子力を必要としており、安全の向上に日本の技術と経験を役立てられるはずだ。

政府が主催した意見聴取会などには原発ゼロを求める声が多く寄せられた。原発ゼロに慎重とされる30代以下の意見が少なく、世代間の偏りも指摘される。

いずれにしても意見集約の結果は政策決定にあたって踏まえるべき材料の一つにすぎない。最後は政治の判断だ。何が本当に国民の安全・安心につながるのか。政府は大局的な観点から責任ある判断を下してもらいたい。

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